もう迷わない!交通事故治療の疑問を解決し、納得のいく補償を得るためのガイド②
6. 示談交渉と納得のいく補償を得るためのポイント
交通事故治療が終了し、症状が固定したと医師に診断されたら、次のステップは加害者側の保険会社との示談交渉です。この段階で、これまでの治療にかかった費用や、事故による精神的・身体的苦痛に対する補償、将来的な影響に対する賠償額が決定されます。納得のいく補償を得るためには、示談交渉の流れや損害賠償の考え方、そして必要に応じて専門家の力を借りることが非常に重要です。
6.1 治療終了後の示談交渉の流れ
治療が終了し、医師から「症状固定」と診断された後、示談交渉が本格的に開始されます。症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指します。この時点をもって治療期間は終了し、それ以降の症状は後遺障害として扱われる可能性があります。
示談交渉は、基本的に被害者と加害者側の保険会社の間で行われます。交渉の一般的な流れは以下の通りです。
保険会社からの提示:
加害者側の保険会社が、治療期間や症状などを考慮し、損害賠償額の提示を行います。この提示額には、治療費、交通費、休業損害、慰謝料などが含まれています。
内容の確認と検討:
被害者は提示された損害賠償額の内訳を詳細に確認し、自身の受けた損害に見合っているかを検討します。
交渉:
提示額が不十分だと感じる場合、被害者側は増額交渉を行います。過失割合に納得がいかない場合も、この段階で争点となることがあります。
示談成立または不成立:
双方が合意に至れば示談成立となり、示談書を取り交わします。合意に至らない場合は、調停や訴訟といった法的な手続きに移行することもあります。
保険会社からの最初の提示額が必ずしも適正な金額とは限らないことに注意が必要です。多くの場合、保険会社は自社の基準で算定した低い金額を提示してくる傾向があります。
6.2 慰謝料や損害賠償の考え方
交通事故による損害賠償は、被害者が被った様々な損害を金銭で補償するものです。その内訳と、特に重要な慰謝料の算定基準について理解しておくことが、適正な補償を得る上で不可欠です。
6.2.1 損害賠償の内訳
交通事故の損害賠償は、主に以下の項目で構成されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 治療費 | 病院や整骨院などでの治療にかかった費用、薬剤費など。 |
| 交通費 | 通院のためにかかった公共交通機関の運賃、タクシー代、自家用車のガソリン代など。 |
| 休業損害 | 事故による負傷で仕事を休んだために得られなかった収入。主婦や学生でも請求できる場合があります。 |
| 慰謝料 | 事故による精神的・肉体的苦痛に対する補償。入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料などがあります。 |
| 逸失利益 | 後遺障害が残ったことにより、将来にわたって得られなくなった収入。 |
| 物損 | 車両の修理費用、代車費用、積載物の損害など。 |
| その他 | 付添看護費用、装具・器具購入費用、葬儀費用(死亡事故の場合)など。 |
6.2.2 慰謝料の算定基準
慰謝料は、被害者の精神的苦痛を金銭に換算するものであり、その算定には主に3つの基準があります。
| 基準 | 特徴 | 賠償額の傾向 |
|---|---|---|
| 自賠責保険基準 | 自賠責保険が定める最低限の補償基準。被害者救済を目的とし、必要最低限の補償を確保します。 | 最も低い |
| 任意保険基準 | 各任意保険会社が独自に定める基準。自賠責保険基準よりは高いですが、非公開で基準は様々です。 | 自賠責保険基準より高いが、弁護士基準より低い |
| 弁護士基準(裁判基準) | 過去の裁判例に基づいて算定される基準。裁判所が採用する基準であり、最も適正な賠償額とされています。 | 最も高い |
加害者側の保険会社が最初に提示してくる慰謝料は、多くの場合、任意保険基準かそれに近い金額です。弁護士に依頼することで、この弁護士基準(裁判基準)での交渉が可能となり、慰謝料額を大幅に増額できる可能性が高まります。
また、過失割合も損害賠償額に大きく影響します。事故における双方の責任の割合を示すもので、被害者にも過失があるとされた場合、その割合に応じて賠償額が減額されることになります。
6.3 後遺障害認定の申請と重要性
治療を継続しても、残念ながら症状が完全に治らず、将来にわたって何らかの症状が残ってしまうことがあります。このような症状を「後遺障害」と呼びます。後遺障害が残った場合、その程度に応じて「後遺障害等級」が認定され、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。
6.3.1 後遺障害認定のプロセス
後遺障害認定を受けるためには、以下のプロセスを経る必要があります。
症状固定の診断: 医師がこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断し、「症状固定」と診断します。
後遺障害診断書の作成:
症状固定後、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。この診断書は認定の可否を大きく左右するため、症状を正確に記載してもらうことが重要です。
必要書類の収集:
診断書以外にも、レントゲン、MRIなどの画像データ、カルテ、各種検査結果など、後遺障害の存在を証明する書類を収集します。
後遺障害認定の申請:
事前認定:
加害者側の保険会社を通じて申請する方法です。保険会社が必要書類を収集し、自賠責保険会社に提出します。被害者の手間は少ないですが、保険会社が被害者に有利な資料を積極的に集めてくれるとは限りません。
被害者請求:
被害者自身で必要書類を収集し、自賠責保険会社に直接申請する方法です。手間はかかりますが、被害者にとって有利な資料を添付できるため、より適切な等級認定を受けられる可能性が高まります。
等級認定: 自賠責保険会社が書類を審査し、後遺障害の有無と等級(1級から14級)を認定します。
6.3.2 後遺障害認定の重要性
後遺障害認定は、交通事故の最終的な賠償額に極めて大きな影響を与えます。
後遺障害慰謝料の請求: 等級に応じて、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できるようになります。
逸失利益の請求:
後遺障害によって労働能力が喪失・低下した場合、将来得られるはずだった収入(逸失利益)を請求できるようになります。
適切な後遺障害等級が認定されるかどうかで、賠償額が数百万円、場合によってはそれ以上変わることも珍しくありません。特にむちうちなどの目に見えにくい症状の場合、適切な診断書や資料がなければ認定が難しくなることもあります。後遺障害認定の申請には専門的な知識が必要となるため、不安な場合は弁護士に相談することをおすすめします。
6.4 弁護士に相談するタイミングとメリット
交通事故の示談交渉や後遺障害認定は、専門的な知識と経験を要する複雑な手続きです。被害者自身で進めることも可能ですが、弁護士に相談・依頼することで、より有利な結果を得られる可能性が高まります。
6.4.1 弁護士に相談すべきタイミング
弁護士への相談は、早ければ早いほど良いとされていますが、特に以下のタイミングでの相談を検討しましょう。
事故直後から:
事故発生直後から相談することで、初期対応や治療の進め方について適切なアドバイスを受けられます。
保険会社との交渉が始まったとき: 保険会社から示談金額が提示された際、その内容が適正か判断に迷う場合。
治療の打ち切りを打診されたとき: まだ痛みがあるのに保険会社から治療費の支払いを打ち切ると言われた場合。
後遺障害認定を検討しているとき: 症状固定と診断され、後遺障害の申請を考えている場合。
過失割合で争いがあるとき: 保険会社から提示された過失割合に納得がいかない場合。
自身の加入する保険に「弁護士費用特約」が付帯している場合:
自己負担なく弁護士に依頼できるため、迷わず相談しましょう。
6.4.2 弁護士に相談するメリット
弁護士に交通事故の案件を依頼することには、多くのメリットがあります。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 賠償額の増額 | 弁護士は「弁護士基準(裁判基準)」で交渉を行うため、保険会社が提示する金額よりも慰謝料や損害賠償額が大幅に増額する可能性が高いです。 |
| 交渉の代行 | 煩雑な保険会社とのやり取りや交渉をすべて弁護士が代行するため、被害者は精神的な負担から解放され、治療や日常生活に専念できます。 |
| 適切なアドバイス | 専門知識に基づき、示談交渉の流れ、必要な書類、後遺障害認定の申請方法、適切な治療期間などについて的確なアドバイスを受けられます。 |
| 過失割合の適正化 | 保険会社が提示する過失割合が不当な場合、弁護士が証拠に基づいて反論し、適正な割合に修正できる可能性があります。 |
| 後遺障害認定のサポート | 後遺障害診断書の作成指導や、認定に必要な検査の提案など、適切な等級認定を得るためのサポートを受けられます。 |
| 弁護士費用特約の活用 | ご自身の保険に「弁護士費用特約」が付帯していれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれるため、自己負担なく弁護士に依頼できます。 |
弁護士は、被害者の権利を守り、最大限の補償を得るための強力な味方となります。示談交渉で少しでも不安を感じたり、保険会社の対応に疑問を持ったりした場合は、まずは無料相談などを利用して、弁護士に相談してみることを強くおすすめします。
7. まとめ
交通事故に遭われた際、まず最も重要なのは、ご自身の身体と心のケアを最優先にすることです。事故発生直後の適切な初期対応から、痛みのない生活を取り戻すための治療、そして最終的に納得のいく補償を得るまでの道のりは、決して一人で抱え込む必要はありません。
本記事で解説したように、事故現場での初期対応、身体の痛みを感じたら速やかに医療機関を受診すること、そして保険会社への連絡は、その後の治療や補償をスムーズに進めるための第一歩となります。特に、早期の受診は症状の悪化を防ぐだけでなく、適切な補償を受けるための客観的な証拠を確保する上で不可欠です。
病院(整形外科)での精密な診断と、整骨院・接骨院での専門的な施術を適切に組み合わせることで、より効果的な回復が期待できます。また、自賠責保険や任意保険の仕組みを理解し、治療費や休業損害、交通費などの補償について把握しておくことは、経済的な不安を軽減し、治療に専念するための基盤となります。
もし保険会社とのやり取りで疑問が生じたり、治療が長引くことへの不安を感じたりした場合は、一人で悩まずに専門家へ相談することが解決への近道です。特に、後遺障害認定の申請や示談交渉においては、弁護士に相談することで、法的な観点から適切なアドバイスを受け、ご自身の権利を守り、より公正な補償を得られる可能性が高まります。
交通事故治療は、身体の回復だけでなく、精神的な負担も伴うものです。このガイドが、あなたが直面するであろう様々な疑問や不安を解消し、安心して治療に専念し、最終的に納得のいく解決へと導く一助となれば幸いです。
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記事掲載 柔道整復師 熊野 箸
